名探偵コナン第11話「ピアノソナタ『月光』殺人事件」のあらすじ・感想

どんな話?

毛利小五郎宛てに送られてきた、謎の依頼文。小五郎、蘭、コナンの3人は、依頼元である月影島に赴く。役場で送り主である「麻生圭二」について聞くと、
12年前に家族を殺害し、自宅に火を放って自殺した有名なピアニストであった。
依頼主について調べる小五郎たちは、途中出会った浅井成美医師の助言を受け、前村長の法要が行われている公民館を訪れる。
そのさなか、ピアノソナタ「月光」の第一楽章が流れ出し、村の資産家である町長候補の川島氏がピアノの上で殺されているのが発見される。
死体発見現場にあったのは、麻生氏が自殺の際、燃え盛る自宅で「月光」を弾いていたピアノだった。そして前村長も、2年前このピアノで死んでいるのが発見されている。
「呪われたピアノ」と「月光」を中心に、12年前から続く死の連鎖に巻き込まれたコナン。

みどころ

#1時間スペシャル

名探偵コナンのアニメとして初の1時間枠スペシャル回。
後述しますが、コナンに強い影響を与えた事件として、初期の中でも特に重要なエピソード。
加えて青山剛昌先生自身もお気に入りと公言。コナンくんの声優である高山みなみさんも、この事件を常に頭に入れながら演じているというほど、
コナンの作品においてひとつの点となっています。

#クローズドサークル

これまでの町で起きる事件とは異なり、古典的な孤島での殺人事件がテーマとなっています。
ミステリー的には、広義な意味でのクローズドサークルパターンといえます。
殺人が発覚するたび流れるピアノソナタや、12年に渡る家族の恨み、麻薬など、海外の本格ミステリーに近似する設定も、名探偵コナンが単なる少年マンガの域を超え、
ミステリーファンにも一目置かれている理由ではないでしょうか。

#宇宙飛行士

いくつかの事件を(コナンが)解決し、そこそこ有名になってきた小五郎ですが、月影島で名乗る度、町民は「ああ、あの宇宙飛行士の・・・」とボケてきます。
これは日本人で初めてスペースシャトルで宇宙へ行った、毛利衛さんと勘違いしていると考えられます。
毛利衛さんは、1992年にスペースシャトル「エンデバー」の一員として宇宙飛行を経験されました。コナンが放映されたのが1996年、該当の単行本発刊が1995年ですので、
当時毛利さんといえば宇宙飛行士が思い浮かぶような状況だったと考えられます。

#探偵としての変化

この事件、犯人やラストが衝撃的で、実はコナンくん自身にも強く刻まれる事件となります。
というのも、
・自分の推理で犯人を追い詰めてしまい、
・事件解決のために自殺した父親のメッセージを伝えられず、
・結果犯人を自殺させてしまう
とコナン自身が強く後悔する結果を招いてしまったためです。

のちの事件でも、この時自殺してしまった犯人を思い浮かべながら、
「犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は殺人者と変わらねーよ」
とつぶやくコナンくんが見られます。
これまでは真実の追求や犯人逮捕に主軸がおかれていたコナンですが、このケースによって探偵としての考え方に幅が出た、といえます。
事実これ以降、コナンくん自身が犯人を自殺に追い込んだことはありません。
そういった意味でも、初めてのスペシャルにふさわしい重要なエピソードになっていると思います。